愛媛県立西条高等学校 商業科 輝安KOU房 担当教諭 渡辺洋子

インタビュー内容

渡辺先生:よろしくお願いいたします。

渡辺先生:はい。今年で活動は、7年目(平成29年度から)になります。市之川鉱山の歴史と輝安鉱の魅力を後世に残していきたい、多くの皆様に知っていただきたいという想いから様々な活動に取り組んでおります。市之川鉱山の歴史や輝安鉱をPRするために、当初は輝安鉱を入れたストラップを作り、市内小学校や文化施設内でのワークショップや販売活動をしました。

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渡辺先生:クラウドファンディングは、2020年コロナ禍1年目に挑戦しました。平成30年9月の台風により、市之川鉱山を代表する千荷坑周辺が大きな被害を受け、無残な姿となってしまいました。現在も「立入禁止」となっています。生徒たちは、今、行動しなければ、世界一の輝きと称賛された輝安鉱が産出された西条の歴史が埋もれ、消え、失うことになる‼という強い危機感と、この歴史を後世に伝えたいという使命感を持っていました。

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渡辺先生:地元新聞社やテレビ、ラジオ、生活情報誌などのメディアにも取り上げていただきました。また昨年度は、松山三越様での研究発表や販売実習をさせていただくという大変貴重な体験をしました。コロナ禍での活動でしたが、生徒たちの頑張りを松山三越、愛媛県観光物産協会、西条市役所シティプロモーション推進課(LOVE SAIJO)など皆様の応援のもと、開催することができました。

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市之川鉱山の歴史や輝安鉱の学習に取り組んだことで、町づくりをしている人々や地域の皆様と出会い、ワークショップや販売活動を通して沢山の交流をさせていただきました。「頑張ってるね」「このボールペン綺麗だね」「輝安鉱?初めて知ったよ。ありがとう」という温かい励ましのお言葉やお声をかけてくださっていることで、生徒たちに大きな喜びと共に郷土を愛する気持ちや自分たちが日ごろ学んでいることを生かすことができたことで、自信にも繋がっています。地域の皆様、関係し応援してくださっている皆様方に有難く、心より感謝いたしております。

渡辺先生:学校での普段の学びが、社会でどのように生かされているのかを知ることができる機会が多くあれば、生徒たちの学びのモチベーションもさらに上がると考えています。「課題研究」やインターンシップもありますが、商業科では、資格取得や研究活動などにも積極的に励んでいます。机の上だけでひたすら考えるのではなく、輝安KOU房の活動や大保木土曜学校、商い甲子園などに参加し、実際に自分たちが現地に行き、そこで活動するために計画(PLAN)・準備→実行(DO)→振り返り(SEE)を体験することが大切だと思っています。自分たちだけでは上手くいかないことを、地域の皆様や企業・官公庁などが知恵やご支援をくださる過程で、生徒たちに貴重な経験と大きな刺激を与えていただいております。高校時代という、学力も人としても大きく成長するこの時期に、地域の皆様と共に活動した素晴らしい経験は、必ず彼らの今後の人生に大きく生かされると確信しています。今、多くの若者が進学や就職を機に地元を離れます。このような地域と関わる体験をした生徒たちが、将来地元に戻り、活躍できる場所があることを知る機会にもなれば良いと思っています。

渡辺先生:はい。輝安KOU房の活動をした生徒の一人は、西条市版ローカルファンドの研修会に参加し地域課題を学ぶ中で、特に「こども食堂」に興味関心を持ちました。子ども食堂を持続可能に運営するためには、ボランティア活動の力のみに頼る不安定では、継続していけないことを学びました。資金調達や運営方法の課題をより深く実践的に学ぶために、高知大学人文社会科学部へと進みました。将来、地元に戻り地域課題解決に関わっていきたいと、頑張っています。地域の活動に参加した生徒たちは、この経験を生かし、さらに自らの可能性を高めるための学びを継続しています。

渡辺先生:行政には行政の担う役割や使命があります。行政だけでは解決しきれない課題に、共に取り組んでいただけたら嬉しく存じます。資金面はもちろんですが、問題解決の糸口となる知恵の提供や人と人とを結びつける(つなげる)ことに期待しています。

現在、本校2年生「マルチサイエンスⅠ」の授業に、「つながり基金」から安形様が参加してくださり、若者の課題について生徒たちと考える時間を持っていただいています。高校生たちにとり「正解のない課題」に初めて向き合っています。初めての取組で模索しながら進めていますが、地元企業様から実践的な手法をご指導いただき、生徒たちの思考力や考察力を伸ばしていきたいと考えています。

また、四国初となるコミュニティ財団「えひめ西条つながり基金」が、西条市にできたということを市民としても誇りに思っています。現代は、心の悩みや高齢者の交通インフラ問題等など、様々な人が様々な悩みを抱えています。その地域課題を住民たちが少しずつ力を合わせていけば、解決できるのではないかと思わせてくれる、希望が持てる場所(組織)が「つながり基金」ではないかと思います。

渡辺先生:生徒たちが活動して得た資金は、市之川鉱山の歴史や輝安鉱を後世に伝えていくために使っていただきたいと考えています。現在、つながり基金内に「市之川未来基金」が創設されています。高校生だけでは解決できないため、「つながり基金」の発信力やお知恵をいただきながら、市之川鉱山跡と輝安鉱の新たな価値の創造に向けた活動に繋げていきたいと思っています。

輝安KOU房は、市之川鉱山の歴史と輝安鉱の輝きが、今以上に市民の皆様に愛され、末永く記憶に残る産業遺構となるよう活動を続けます。今後とも応援くださいますようお願いいたします。

渡辺先生:こちらこそありがとうございました。ぜひ、輝安KOU房の活動を多くの皆様に知っていただけると嬉しいです。